二譚 遊戯

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  □ 「……し、死ねる……」  体中の痣の数はいざ知れず。背後の巨木はクレーターだらけで元の姿からは想像もつかないような悲惨な姿をさらしている。  サッカーってこんな命がけのスポーツだったかなぁ。いや断じて違う。少なくとも僕が知っているサッカーはもっとスポーツマンシップに則っていたはず。  少なくとも、こんな死に物狂いで剛速球を避けるスポーツではない。 「もう終わり?」 「ちょ、ちょっと休憩……」 「じゃあさ!」  最近の子供はどこまでパワフルなのかは知らないが、へたれる僕に対し少女はにっこりと笑った。  花が開いたかのような満面の笑みに、僕はさっきまでの死闘(疑問は絶えないが)をちょっとだけ忘れた。  ……すぐに、それ以上の惨事に上塗りされただけだけども。 「弾幕ごっこしようよ」 「……弾幕ぅ?」  その単語から否応なく連想される、先日の屋上での出来事。出来ればもう一生思い出したくなかったけど。  そんな先入観があったもんだから、とんでもなく恐ろしい遊びに聞こえてしまって、僕は思わず苦笑いを浮かべてしまった。苦笑いの半分は、自分への嘲笑である。  言い換えればそれは、そうであってほしくないという期待だった。  さて、もうフラグを建立しまくってしまったようでございます。  少女は一枚の札を取り出した。  その姿は、そのまま昨日の魔理沙さんと同じ格好で── ──禁忌 クランベリートラップ  色とりどりの弾が、一斉に僕の視界を埋め尽くした。 「避けたらあなたの勝ち! あなたが死んだら……」  こら、死んだらとか言っちゃだめです。って、そんな場合じゃなくて。  太陽すらも霞みそうな無垢な笑みを浮かべて、少女はこんなことを言うのだった。 「私の勝ち!」  
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