二譚 遊戯

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   じわりじわりと後退。まだ後ろの方がスペース空いてたから後退してるだけなんだけども、結局これって袋の鼠なんだろうね。  無駄な時間稼ぎ。ほら、まだ生きていたいと思わない?  とか言ってたら、 「──うわぁ!?」  ベタなことに、木の根に引っかかってそのまま腰からドテン。なんつー修羅場!  前進してくる弾の速さはそれほどではないないものの、質量差で圧倒的にさっきのサッカーボールより凶暴性を秘めていた。  傍目から見れば、綺麗な弾が宙に浮いているという綺麗な景色。ところがぎっちょん、その渦中に放り出された僕の心境はかなり鬱屈していた。  というかもう眼前に迫った弾幕を前に、僕は本能的に瞼を瞑ることしかできなかった。 「うわああああ…………ぁ?」  おや、痛みが……こない?  もしやもう天国?  おそるおそる目を開けてみた。  何か不思議なことに、尻餅をついた格好の僕の真上を弾が飛んでいく。丁度、転ばなかった時の僕の頭くらいの高度。  どういうことだろうか。僕は完全に無防備だったはずなのに。 「って、そんな場合じゃない!」  たまたまでも外れたのなら僥倖。ああラッキーだったなぁ。以上終わり!  僕に襲いかかってきた方向を見ると、陣形が崩れて脱出可能になっていた。目指すはそこ一点。周りの弾も既に僕に向かって飛び始めている。  地を這い蹲り、必死で移動開始。口の中に入った土や泥がどうにも不快だけど、贅沢なんて言ってられない。  なんか、蜂にでも襲われている気分だ。 「なんで僕がこんな目にいいいい」  一周回ってむしろ笑うしかない。苦笑いだけどね。  
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