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必死に転げ回りながら、弾の陣形の隙であるただ一点を目指す。
背後から、両脇から、弾は僕を逃がすまいと追いかけてきた。まるで大きな一つの意思に統率されているかのように、全ての弾が僕だけを正確に狙い撃たんとしている。
ただ一言。超恐い。
その一言に突き動かされる僕の四肢は、もはや走るというより転げ回る格好になっていた。
足を取られて体勢を崩し、時折手を付きながら。それは文字通り、必死の逃走劇だった。
ただ、そんな必死が功を成したのか、その弾幕の切れ目に辿り着くことができた。
もつれる足、崩れる姿勢をもはや抗おうともせず、僕はその隙間に転がり込んだ。
「いよっし、セーフ……って甘かったぁ!?」
転がった目の前に、鮮やかな紫色の弾。
その球体に、鏡あわせになった僕の顔が映る。少し横に広がった面白い顔だ。とにかくそれくらい近くに弾があった。
僕の運動神経で避けられるわけがない。なにせ、分かりやすい比較対象である宗一郎に不可能だったのだから。
僕は武道の心得もなければ、運動神経が良いわけでもない。特に知的ってわけでもないし。
加えて、転がった姿勢のままで身動きが取れない。 さっきみたいなまぐれだって、二度も起こるわけがない。
こんな小さな弾の群れに、僕は命の危機すら覚えていた。でもそれはきっと正しい。
いよいよ、やばい。
「うわぁぁ!!」
無我夢中で、僕は体を横に投げ出した。
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