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走り出す。この弾幕を生み出しているであろう少女の元へと。
この弾幕が一体どんな原理なのか。なぜこんな幼い子供にこんなことできるのか。そもそもこの子は誰なのか。
枷にしかならないくだらない疑問を全部脱ぎ捨てて、身軽になった僕は更に加速する。
二つの仮説。
あの弾は一つ一つが独立した動きをしているように見えて、そうじゃないんだ。
幾つかに区分けされた弾幕はその塊ごとに、直線的に射出される。
言ってみれば、弾のコロニー。それがただ整列しているだけなんだ。緻密かつ芸術的な配置に幻惑されていただけなんだ。
もう一つの仮説。
一度動き出した弾は更なる方向転換の術を持たない。
一つのコロニーは、曲折不可能なロケットとなんら変わりない。
僕の仮説が的中し、僕がアクションをミスしなければ、そこに勝機がある。
僕は首を捻って、背後から僕を追跡してくる弾を確かに確認した。よし、大丈夫。
近づく少女の顔は、これから何が始まるのかという好機で綻んでいた。
少女は、僕による暴力を予測していない。もしくは、それが一切恐くないのか。どちらにせよ、暴力なんて振るいたくないからそれはそれでいい。
さて、最後の一作業。
手を伸ばせば少女に届く、そんな距離で、僕は刹那のタイミングを掴み取る。
「せぇのぉぉっ!!」
視界が、一気にブレる。
正面切って突っ込んでいたその対象、フランドールの姿がかき消える。
いや、消えたのは僕。少女の目には、そう映ったかもしれない。
僕は地に伏せっていた。
そして、僕の背後から現れたのは、まさに弾幕!
「えっ!?」
待ち望んだ驚きの声と、弾がぶつかる気味の良いBGMを耳にしながら、僕は小さくガッツポーズしたのだった。
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