二譚 遊戯

22/37

451人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
   走り出す。この弾幕を生み出しているであろう少女の元へと。  この弾幕が一体どんな原理なのか。なぜこんな幼い子供にこんなことできるのか。そもそもこの子は誰なのか。  枷にしかならないくだらない疑問を全部脱ぎ捨てて、身軽になった僕は更に加速する。  二つの仮説。  あの弾は一つ一つが独立した動きをしているように見えて、そうじゃないんだ。  幾つかに区分けされた弾幕はその塊ごとに、直線的に射出される。  言ってみれば、弾のコロニー。それがただ整列しているだけなんだ。緻密かつ芸術的な配置に幻惑されていただけなんだ。  もう一つの仮説。  一度動き出した弾は更なる方向転換の術を持たない。  一つのコロニーは、曲折不可能なロケットとなんら変わりない。  僕の仮説が的中し、僕がアクションをミスしなければ、そこに勝機がある。  僕は首を捻って、背後から僕を追跡してくる弾を確かに確認した。よし、大丈夫。  近づく少女の顔は、これから何が始まるのかという好機で綻んでいた。  少女は、僕による暴力を予測していない。もしくは、それが一切恐くないのか。どちらにせよ、暴力なんて振るいたくないからそれはそれでいい。  さて、最後の一作業。  手を伸ばせば少女に届く、そんな距離で、僕は刹那のタイミングを掴み取る。 「せぇのぉぉっ!!」  視界が、一気にブレる。  正面切って突っ込んでいたその対象、フランドールの姿がかき消える。  いや、消えたのは僕。少女の目には、そう映ったかもしれない。  僕は地に伏せっていた。  そして、僕の背後から現れたのは、まさに弾幕! 「えっ!?」  待ち望んだ驚きの声と、弾がぶつかる気味の良いBGMを耳にしながら、僕は小さくガッツポーズしたのだった。  
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

451人が本棚に入れています
本棚に追加