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それはまるで、巨大な硝子に強大な力が加わって粉々に砕け散ったのではないかと思わせられるほどの大きな音だった。
思わず飛び跳ねて驚いた。自然に起こる音じゃないことは明らかすぎる。
鼓膜に残るその不快な音に顔をしかめながら、僕は立ち上がった。
確かめないといけない。興味半分、恐怖半分。今まで感じたことのない、二つの感情が混ざり合った不思議な気持ちに駆られて僕は歩き出した。
小鳥の囀りが完全に消え失せていることに気付くには、そう時間はいらなかった。
絶え間なく続けられてきたコーラスが途切れたことに、一抹の不安と得体の知れない不気味さを覚える。
歩くたびに、とある匂いが強まった。重苦しい雰囲気、というか空気。この先に何かあるという形のない確信。
それと同時に、近づくなという強い警鐘が僕の中で鳴り響いていた。
それでも、磁石に吸い寄せられるかのように僕は歩みを進める。
やがて木々の生い茂る場所を抜け、開けた広場へと出る。
丈の低い草がカーペットのように生えており、よく友達と遊んだ場所として記憶も色濃い。
そこにあった光景に、僕は目を疑った。
「空に、黒くて、楕円っぽい、穴から、目?」
これは比喩でもなんでもない。目の前に広がった摩訶不思議な現状を、思いつく限りの単語をくっつけて表現してみただけだ。
非現実的すぎる、夢の中の出来事と割り切る方がいかに簡単か。
しかし、現実逃避など許さぬと言わんばかりに僕を睨む無数の目。感情の欠片も映さない無機質な目が一斉に僕を確認した。……快晴の真昼だというのに寒気が。
さっきの硝子が割れたような音は、まさしく空が割れた音に違いなかった。
「……夢だね、まちがいなく!」
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