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「咲夜が遊んでくれるの?」
歓喜に綻ぶフランドールと一発触発の雰囲気を漂わせる銀髪メイドさん。
その間を、お嬢様と呼ばれた少女の声が割った。
「やめておきなさい、咲夜」
「ですが……」
「文句があるというの?」
「……畏まりました。お気をつけて」
「フン、誰に言っているんだか。
というわけで、私が遊んであげるわ、フラン」
「お姉様が!」
フランドールの顔が、更なる喜びに歪んだ。
溜息を一つ吐き出して一歩踏み出した少女の横顔は、直視することすらおこがましいと思ってしまう程に強(こわ)く、美しかった。
しかし、この子の言う「遊び」というものがどれだけ凶暴で危険なものか。
多分、銀髪メイドさんもこの少女も、その遊びの正体を知った上でそう言っているのだろう。
だけど、僕には二人を止めなければならない理由ができてしまった。
歩みを進める少女の顔が不意にこちらを向いた。
その横顔を見つめていた僕は視線がぶつかったことに思わずたじろいで視線を外してしまった。
それでも何も言わずに、少女は僕を見下ろす格好で言葉を投げかける。
「フランのスペルを生身の体で避けきるとは、驚いた。でも偶然なんかじゃなく、貴方はそういう運命を背負っていたということ。
さぁ、役者交代よ。そこで這い蹲っていなさい、ニンゲ──あうっ」
…………。
……何もないところで転んだよ?
思わず唖然としてしまった。
銀髪メイドさんが無表情で近寄ってきて、少女を抱き起こす。何事もなかったかのように少女の服についた泥を払っていた。
「……」
「……さぁ、役者交代よ。そこで這い蹲っていなさい、人間」
……あ、はい。そうですか。そうですね。
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