二譚 遊戯

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   片や、紅蓮に染まる魔杖を頭上高く掲げ。  片や、深紅の槍を投擲せんと頭上高く掲げ。 「いっくよー!」 「──スピア・ザ・グングニル」  張り詰めた凶器が、解き放たれた。  轟、と音を立てて大気を切り裂く二つの狂気が新緑の森を奔った。  マッハなんて生温い程の速度を伴い、弾丸と成ったそれらは標的を射殺さんと猛進する。  その一撃を身に受け、立っていた者が勝者。死んだ者が敗者。そんなものを、許しちゃいけない。  そして僕は間一髪、その不可侵であるべき空間に、身をねじ込んだ。 「へ!?」 「ニンゲン、なぜ!?」  双方向から驚きの声が上がる。そりゃ、そうだよね。  殺傷能力でいえばこの世界の何より勝っているであろうその二つが衝突する真っ只中。なんで僕なんかがそれの板挟みになってるんだろうか。  そりゃ、こうでしょ。 「止まれえええええええっ!」  二方向から襲い来る超高速の弾丸。僕は必死に静止を願い── 「──馬鹿ね」 ──時符 プライベートスクウェア  そのまま、意識を手放した。 □  
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