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夜が帳を下ろし、まんまるの月が雲間から顔を覗かせる。真っ赤でもなんでもない普通の月だ。めでたい。
そう、異変は解決したのだ。何を隠そう僕の活躍によって、平穏な夜が帰ってきたのだ。
とまぁ、ここまで言えばまるで英雄譚のように聞こえるんだけど、むしろここからが僕の災難の始まりだった。
「狭い」
「お嬢様、やはり私の能力でこの狭苦しい部屋を無理矢理広くしましょう」
「そうしなさい」
「是非やめてくださいお願いですから」
部屋の住民が飛躍的に増えたのだ。正確には三人。
……いや、吸血鬼を人として数えるのかは謎であるが、ここは細かいことは無礼講としておこう。
ともかく、吸血鬼×2とメイドが加入した。今はいないが巫女と魔法使いと剣士(宗一郎)を加えるとまるでRPGだ。
そしてもう一つ問題点を挙げるとするならば──
「あだぁっ」
僕の体に電流走る。
黙っていても全身激痛の嵐だ。指一本でも動かそうものなら、足の裏まで激痛が徒競走する。
遊びの代償が筋肉痛となって僕を蝕んでいた。すんごく痛い。
家までも、咲夜さんにおんぶしてもらって来たのだった。周囲の目がメチャクチャに痛かった。後世に語り継がれそうな醜態である。
その元凶であるフランドールというと、部屋の隅で膝を抱えてぐっすり寝ちゃってるし。まぁ、彼女を責める気はないんだけども。
ふぅ、と息を漏らしながら視線をレミリアさんに戻すと、ずっとこっちを見ていたのか視線がぶつかった。
「どうかした?」
「……貴方の運命が見えない」
「…………はい?」
ウンメイ、って僕の文字変換機能だと「運命」しか出てこないんだけども、それを、見る?
理解不能。意図不明。ワッツミーン。
頭上にクエスチョンマークを大量生産する僕だったが、レミリアさんは呆れたように溜息を漏らして言う。
「いくらツェペシュの末裔である私でも調子が悪い時はある。それとも、貴方が何か特別な物を持っているなら、話は別だけども」
くつくつと笑いながら。
いやいや、特別な物とか僕に最も無縁な言葉ですから。
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