二譚 遊戯

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   宗一郎はと言うと、これまた部屋の隅でキノコ大百科を読んでいた。昨日魔理沙さんが食い入るように見入っていた代物である。  位置的にはフランと線対称になる隅。ついでに、レミリアさんや咲夜さんとも目線を合わせようとしない。  僕の親友が吸血鬼アレルギーかは別として、ともかく彼は自慢の集中力を持ってキノコと相対していた。  なので、これ以上は触れないようにする。  目だけで部屋中眺めていた僕だが、その最中、今度は咲夜さんと目があった。  何やら、物珍しいものを見る目だった。 「……どうかした?」 「いえ、妹様と"遊んで"生きていた者を見るのは霊夢と魔理沙以来初めてだったかと思いまして」   「あ、あはは……」  それは褒められているのか。  そっちもかなり気になるところだったが、咲夜さんの口から出たその二人の名前は見逃せなかった。 「霊夢さんや魔理沙さんの知り合い?」  二人はあの妙ちくりんな穴から落ちてきたんだ。  その二人の知り合いらしきこの女性に聞けば、二人がどこから来たのかも分かるかもしれなかった。 「あら、なんで外の人間がその名前を知っているかしら」  と咲夜さんが疑問を口にすると、 「其奴も、幻想郷出身なんじゃないの?」とレミリアさんが僕を指さす。  外の人間とか幻想郷とか、あなた達は一体どこの宇宙からやってきたのでしょう。  と、思わず聞きたくなったが抑える。  さっき出会った人に失礼すぎるだろうという理性の尊い勝利だ。  と、そんなやりとりをしている時だった。  トントントン、と階段を上がる音。  どうやら渦中の人物たちが帰ってきたようだ。  
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