一譚 希望の果て

5/25
前へ
/168ページ
次へ
   巫女服の人は、魔女の人の上に真っ逆さまに落下した。 「ぎゃぁ」 「のぶっ」  哀れ魔女の人、巫女の人に押し潰される形になってしまった。  爬虫類のような声を出し、そのまま魔女の人はついに動かなくなった。 「えーっと。……あはは、笑うしかないね」  笑ってる暇じゃないって。大丈夫だろうか。  近づこうとしたら、巫女の人のほうが僅かに呻き声を上げた。頭に付けたやけに大きな赤いリボンを揺らし、起き上がった。  魔女の人がクッションになったのだろうか、しかしその犠牲になった魔女の人は起きあがる気配もない。 「いったた…………ん?」 「あ」  目が合って、そのまま硬直。  穏やかな風が僕と巫女の人の間を通りすぎ、静まっていた小鳥のさえずりも無事再開されたことを喜ぼう。  ワケの分からない沈黙が数秒、突然、巫女の人の顔が引きつった。音で表すならばギョッとした。  多分、僕も同じ顔をしていたに違いない。  
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

451人が本棚に入れています
本棚に追加