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十六夜咲夜始め、レミリア、フランドールの両姉妹が天谷の家に棲み着いたのは昨日のことだ。
理由は単純、寝床の確保である。
宗一郎はさして迷惑にも思わなかったし、何より叶にこれ以上負担をかけるのは彼の叶に対する意識の良しとするところではなかった。
この一派、とりわけフランドールに関しては、叶に危害を加えかねないとの宗一郎の判断だった。もちろん、宗一郎自身にその災厄が降りかかることをその場にいた誰しもが想像したが、それでもこの男は寛大であり、暢気であり、自意識が一切無かった。
一応の対抗策として吸血鬼の弱点を教えられたものの、宗一郎の不足気味な一般常識と見比べても寸分違いない単語の羅列に、そちらの方が不安になりそうだった。当の吸血鬼といえばそれらを片っ端から否定するのだから、尚更。
(……ま、吸血鬼程度が暴れてもなんとかなるだろう)
奇跡的暢気男、天谷宗一郎。竹刀を振りながらそんなことを思っていた。
本気の吸血鬼が暴れれば町一つ吹き飛ぶだけでは済まされない。それでも楽観的なのは自分の剣道を過信しているからか、それとも本当に何も考えていないからか。
それも冗長な科学者が提説する「血液型による性格判断」に所以させるとしたら、宗一郎は間違いなく典型的B型であり、それは事実である。
ちなみに、レミリアがB型の血液を好むというのは後付けの理由だ。
(……おっと、集中を切らしている場合じゃないな)
無駄な思考を打ち払うかのように、宗一郎は一心不乱に竹刀を振るった。
まだ太陽も眠っている朝は、肌を刺すような寒さに包まれている。そう感じるのは、集中しきれていない証拠だった。
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