一譚 希望の果て

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   よく見るとかわいい顔を思いっきり歪めた巫女装束少女は、その唇から特大の感嘆符を漏らした。 「っ!!」 「な、なんですか!?」  思わず聞き返した僕を無視したのか気付かなかったのか、巫女の人は険しい表情でぐわっと振り返り、倒れていた黒い人の襟首を掴んだ。 「起きなさいあんた、行くわよ、逃げるのよ!」 「ちょ、ちょっと待ってくれ。こっちだって体中痛いんだぜ──って」  抗議の声も聞いてもらえないまま、半ば引きずられる形の魔女の人に同情を……じゃなくて。  うわぁぁぁぁぁ、とやけに尾を引く悲鳴を残して遠のいていく二人の背を僕は思わず追った。 「ちょ、ちょっと待ってよ!」  だが、まさに脱兎の如きスピードに、部活もやっていない僕が追いつけるはずもなく。  いや、男女という差があるのだから追いつかなければならないのだが。しかも地の理というハンデがあってさえ、二人の姿を一瞬で見失ってしまった。 「ちょ、早っ……ええと……僕って一体……」  穴の向こうから無機質に僕を見る無数の目の沈黙が僕を遠回しに非難しているようで無償に情けなくなった。  僕はあえなく追跡を断念し、そして空の穴の対処法に困った。勝手に閉じないかな、というのは可能性の欠片もない希望的観測に過ぎない。 「ど、どうしよう」  誰かに連絡するわけにもいかず、かと言って自分の力でどうにかできるわけもなく。  僕はしばらくそこでうろうろしていたが、結局今日は帰ることにした。  触ってみようかとも思ったけど、手が届かなかったからやめた。  今度脚立でも持ってこようかなと思いつつ、山を下りる僕だった。     □
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