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驚きの声を小さく上げるが、それは実力が拮抗した二人には当たり前の結果だった。
荒れた息を整えながら、二人は笑みを交わした。
「強いな」
「あなたも」
「楽しいな」
「すごく」
「……だが」
「……でも」
終わらせなければならなかった。最初から、目指す場所はそこだった。
この最高に楽しい一時を、勝利という完全無欠なフィナーレで迎えられるために。
宗一郎は、そこに立つ自分を思い描きながら言う。
「次でラストにするか」
「どちらにとっての、ラストなんですか?」
息も動悸も、ちっとも整わなかった。体の火照りは、時間と共に増していった。
宗一郎は、込み上げる歓喜を表情にそのまま映して言った。
「自分の勝利を疑わないから、俺たちは竹刀を握っているんだろう?」
言いながら、宗一郎は手に持った竹刀をゆっくりと上昇させていった。
やがて天を衝く格好で落ち着くと、全身に鋭気が漲るのを感じた。
妖夢の表情が強張る。それほどまでに、肌を焼く威圧感が空間を支配していた。
「これが、俺の本気だ」
──これまで、防御よりも攻撃に重点を置いた剣道をしてきた宗一郎だったが、この構えにその全てが集約されていた。
竹刀を高く構えることで脇はがらんどう、胴など食らえば細枝のようにあっさり折れる。
しかし、それを補って余りある竹刀の出の速さや間合いの取られにくさ、そして何よりも勝る──圧倒的な威圧感。
人はその構えを、まるで火の如きと形容した。人はその竹刀を、天を衝くようだと言い伝えた。そんな比喩が意味を成さぬ程、その構えに畏怖を抱いていたからだ。
それは他の追随を許さぬ攻撃の最高峰。宗一郎の剣道の真髄、
──上段の構え。
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