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一瞬にして緩慢な対話が終わりを告げ、二人の意識は急速に現実の引力に引き戻される。
音もなく、動作もなく、熱気もなく、戦気もなく、鋭気もなく、威圧感もなく、緊張感もなく、高揚感もなく、疲労感もなく。
それまでその空間を支配していたありとあらゆるものが、その一瞬で消し炭も残さず跡形もなく消え去っていた。
空気の流れすらも存在しない、完全なる静寂の中──。
物言わぬ彫刻のように動作の途中で沈黙する妖夢と、背中合わせになるように残心の構えを取った宗一郎の姿があった。
一体いつまでそうしていたのかは、その場を客観的に見る者にしか量り得ない。
それほどまでに、先ほどまで激しくぶつかり合っていた両雄の時間は麻痺していた。
やがて勝者は音もなく振り返り、好敵手の小さな背中と相対した。
「……くやしいなぁ」
ぽつり、木造の道場に木霊していく声が空気に溶けていった。
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