三譚 宗一郎という男

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  「ちなみにどういった理由で人を殺すのかとかは聞かん。私は、決闘にいちいち理由を付けるのは好きじゃないからさ。勝てば晴れて発言権ゲット。負ければ剥奪。そういうもんだ」  腕を組み、誰に聞かせるでもなくうんうんと頷く魔理沙。割って入られた格好の霊夢から冷ややかな視線を送られるも、涼しい顔をしていて仁王立ちしていた。ちなみに、仁王立ちといっても依然その体は宙に浮いており、その足はしっかり箒に付いている。 「邪魔しないでよ、魔理沙」 「だーかーらぁ」  魔理沙は人差し指を立て、霊夢ににじり寄った。 「独り占めはよくないぜ、霊夢」  そしてにやりと笑みを浮かべながら、人差し指をゆらゆら揺らすのだ。  ようするにこの金髪少女、自分が闘いたいらしい。  自分が闘うと信じて疑わなかったであろう霊夢は面食らったように目を丸くした。 「なによ、先に私とやるつもり?」  その決闘で賭けるものは、幽々子との決闘チケット。なんとも交錯矛盾した動機である。  しかし魔理沙は首を振ってそれを否定した。 「出来る限りの無駄は端折らないと。間延びはよくない」  魔理沙は更に一歩(箒で浮いているため、少々の語弊はあるが)霊夢に詰め寄り、 「じゃーんけーん」 「え、なっ!!」 「ぽんっ」  石は紙に勝てず、紙は鋏に勝てないけど、鋏は石に勝てる。  魔理沙は有無を言わさず、そんな平和的決闘を繰り出す。拳が交わされるより一瞬早く、その顔がしかめっ面に変わり、 「むっ」  こういう時は言い出しっぺが負けるという通説に寸分違わず、繰り出された両拳は霊夢に勝利を、魔理沙に敗北を格付けした。した、はずだったが。 「あっ、霊夢なんだあれ! 賽銭が飛んでるぜ!」 「!!」  そうして、魔理沙は晴れて幽々子との決闘チケットを手中に収めたのだった。  
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