一譚 希望の果て

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  □  翌日、何事も変わらない高校生活における一週間が始まった。  昨日の出来事はまだ誰にも話していない。誰かに話すことでその人も巻き込まれるようなことになったら嫌だったからだ。  信じてもらえるかどうかも不安だったし。小心者とはよく言われる。  そんな僕、申し遅れましたが、  渡良瀬 叶(わたらせ かなえ)と申します。  少し自己紹介をしようと思う。  とはいっても、それは至極面白みのないものになるかもしれない。  なぜなら僕は一介の普通極まりない高校生に過ぎないから。  部活には入っていない。  テストの点数はある程度取ってるけど、将来を見据えて勉学に励んでいるわけでもない。  何か特技を持っているわけでもなく、友達によく言われる僕の美点は「弄られキャラな所」と「女装が似合うところ」。甚だ心外である。  運動神経、学力、知能、友人関係、家族関係。およそ想像できる全てのことに対して付けられる評価は並。  もちろん、他人には言えない秘密の特殊能力だとか武術の心得があったりはしない。  平々凡々。まさに僕を象徴するに相応しい四字熟語だ。  そりゃ、普通が悪いことじゃないとは思うけどさ。もうちょっと他の人と違うところがあっても良いと思うんだ。  世の不平等、いや恐ろしいまでの平等さに呻っていると、 「叶」  呼ぶ声に僕は振り返った。そこには見慣れた顔。 「あ、宗一郎おはよう」  基本的に朴訥な僕の親友は、片手を上げて隣の席に座った。  
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