三譚 宗一郎という男

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   刹那的な行動を強いられた時、脳は組み立てられた理論よりも染みついた本能による行動を優先させる。  魔理沙の、弾幕と共に舞う舞踏にも似た飛翔は、長く弾幕と戯れ、弾幕と過ごしてきたからこそ体が覚えた最善の行動シークエンスだった。  気分がハイな時ほど、無意識の選択に体を委ねる。そうなったら止まらない。魔理沙の戦闘センスはつまり、その一点に集約される。  回避から攻撃へと流動的に翻る、魔理沙の戦闘センスはそんなことも容易くやってのけた。      大気を轟音が、続いて衝撃が奔った。波紋を広げていくその衝撃波の震源地は、未だ回転しながら運動エネルギーをただひたすらにぶつける魔理沙と、それを扇子一つで受け止める幽々子の間に在った。     「──ぐぅ」      魔理沙を扇子一つでで防ぐ幽々子の眉が、僅かに歪んだ。     「絶好調の私は、誰にも止められないぜっ!」   「っ!!」      瞬間、幽々子の体が山の傾斜に弾き飛ばされた。  その一撃にどれほどの威力が込められていたかは、幽々子の後退距離を見れば推し量れる。木々を薙ぎ倒し、あまつさえその山肌すら抉ったのは紛れもなく、弾丸の如く撃ち出された幽々子自身だった。      自身の一撃を物語る砂煙に咳き込みながら、魔理沙は大地に降り立った。  勝利と呼ぶには、あまりに分かり易い決着だった。  
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