三譚 宗一郎という男

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   勝利を疑わず、またそうさせる理由も無かった。  したり顔の魔理沙もまたその例に漏れず、視界を遮る砂塵が収まるのを心待ちにしていた。  そんな、決闘とその余韻の、少しだけの間。  魔理沙は視界の端に人影を捉え、その大きな瞳を更に見開いた。飛んでいる彼女からはそれを見下ろす形になる。 「ん、あれは……」  出来る最善の行動はひっそりと隠れることだったが、気分がハイな魔理沙は自らの興味を優先させ、その人影をまじまじと見た。  袴姿の大柄の男で、スポーツ刈り。朴訥そうな仏頂面。 「って、宗一郎じゃないか」  おぉ、と手を鳴らす魔理沙。  所在なく彷徨っていた人影──宗一郎もまた、ふと顔を上げた矢先に魔理沙を確認したようだ。ひらひら、と手を振っているのが上空の魔理沙からも確認できた。  魔理沙は箒に跨り下降していく。  そうして、いざ地に足を着けようかという時だった。 「おぉ、霧雨、いいところに。魂魄妖夢、見なかったか?」  宗一郎の口から発せられたのは、空を飛んでいることへの疑問でもなく、なぜこんなところにいるのかでもなく、あろうことか人物捜索届けだった。 「妖夢? あれ、やっぱり幽々子がこっちに来てたってことは妖夢もこっちに来てるのか」  口ぶりからして、知っている風ではない。そう判断したのか宗一郎は軽く嘆息し、周囲を見渡す。 「っていうか、なんで宗一郎が妖夢のことを──」 「──妖夢、遅いわよぉ」 「申し訳ございません。もう、幽々子様には指一本、触れさせません」  魔理沙の言葉は遮られ。  ようやく晴れた土煙の中から、冥界の主とその従者が姿を現した。                   「──という、お話だったのさ。それでな、──」      
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