三譚 宗一郎という男

31/32

451人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
  『ミライエーゴーザン!』 『ぐわー』      ……だ、そうである。  まったく理解の範疇を越えている、というよりそんなの理解したくない。  なにが「ぐわー」だよっ。まったく。 「ま、まぁ無事でよかったね」  僕は引きつる頬を押さえ込む気力すら起きず、満面の苦笑いを浮かべながらそう言った。 「すっごく痛かったぞ」 「でも宗一郎なら空飛んだくらい平気でしょ」 「ははっ、まあな」  本当に照れるあたりがさすがとしか言えない。いつものように放置することにした。  霊夢さんと魔理沙さんはよくわからない口論に興じている。  やっとのことで僕はその渦中の二人を正視することができた。  真っ先に目があったのは、水色の浴衣を着た女性。  穏和な笑みを浮かべており、おっとりしたお姉さんのような雰囲気に思わず和んだ。  うん、この人は常識人。きっとそうに違いない。  僕は久方ぶりにやっと見つけた「普通の人」に話しかけようとした。が、その本人に遮られた。  耳を疑ったね、僕は。 「ねぇ、あなた。この世界に幽霊はいないのかしら?」 「……」  あぁもう、誰か僕を普通の世界に連れ戻してくれ。  こんな変人ばっかりの世界なんてまっぴらだから。  僕の周りで変人なのは宗一郎だけだったはずが、最近出会うどんな人でさえも、みんな変人なのである。  ……って、宗一郎は変人というより剣道馬鹿か。  どちらにせよ、溜息は尽きない今日が、ようやく終わろうとしていた。  僕は何もしてないけどね!  
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

451人が本棚に入れています
本棚に追加