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ある日の晩、
夜は老け、世は乱世。我等忍者が動こうとした時である。
ふと扉に気配があった
全員が気配に気付き戦闘体制に入った、
気配からして相手はよほどの強者・・・
気配は恐らく業と出している、長年磨かれた勘が研ぎ澄まされる。
仲間の一人が口を開く
「その扉の向こうにおりし者、何の様だ」
威嚇でもするかの様に強く張り詰めた声だった。
しばらく返事はなかった、だが気配はある・・・
扉の向こうから声が聞こえた
「我は闇に向かおうとする者」
闇に向かおうとする・・・
遠回しだがそれはつまり闇に染まるということ
馬鹿な・・・、この乱世誰にも見られぬましてや暗殺者とまで言われよう忍者にわざわざ何故なろうとしよう?
当たり前だが皆扉は開けぬ・・・
敵かも知れぬからだ
「我は敵ではおらぬ」
そのような事信用するはどんな"お人よし"であろう?
だが私達の中にその"お人よし"はいた
忍者の中でもかなりの若僧で要らぬ正義感のある子だ。名は隠賀。我等忍者は皆名を捨てた、そして扉を開けた少年の名こそが隠賀・・・
忍者の名・・・、もう一つの名だ。
カラカラ・・・
隠賀は扉を開けた
皆武器を強く握る・・・
だが次の瞬間
扉の向こうにいた人物はクナイを隠賀の首筋に宛てていた
「子よ・・・信用ならざる者に容易に手を差し出してはならぬ・・・」
誰もが落ちると思った首は落ちなかった・・・
安心以上に不安がよぎった
乱世に生きる者・・・
当然だ。
こいつの目当ては何だ
何故斬らなかった?
色々な確率が頭を埋める
話しを切り出したのはこの村の村長だった
「黒き者恩師は何しに参った隠賀を斬るつもりか?」
村長が言った黒き者・・・
それは言葉通りだった
口を覆う真っ黒な布を始め長いコートのような装束に純血を吸ったかのような紅の赤。その姿はまさに闇に住みし者だった・・・
「我は子を斬る気などあらぬ」
彼が言ったのはたった一言・・・
「我を闇に置いてくれ」
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