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朝、目が覚めたら、隣に知らない男が寝ていた。
まずいことに透(とおる)も相手も全裸だ。
何があったのかなんて想像もしたくない。
周りを見渡すとそこは間違いなく自分の部屋で、透が毎日寝起きしているベッドだ。
そっとベッドを降りようと体を動かすと、スプリングが軋んで体が揺れる。
隣に眠る男が目を覚まさないことを確認して床に足を着いた。
ズボンだけを身につけ額に掛かる前髪をかき上げると、切れ長の瞳で改めてベッドで眠る男を見下ろした。
だが、どれだけ考えてもその男に見覚えはなかった。
「ん……っ」
男が身じろいで寝返りをうった。
目を覚ましたのだろうかと顔を覗き込んだが、そうではないようだ。
「落ち着け、俺。昨日は確か合コンに誘われて、結構飲んだ……よな? それから……どうやって帰ってきたんだっけ……?」
酒を飲んでからの記憶が無い。
自分の部屋にいるということは、自分で帰ってきたことは間違いないのだが、酔ってから見知らぬ男を拾って帰るまでのことを全く思い出せないのは不味い。
気持ちを落ち着かせようとくわえた煙草に火を点け、煙を吸い込みながら無防備に眠る男のことを思い出そうとするが、記憶の片隅にも男の顔は出てこない。
「あいつ……誰?」
吸い込んだ煙を、溜息と一緒に吐き出して呟いた。
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