第一章

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 あっけない終演だった。  遊びだったのだと気付いた時には、手の届くところに相手はいなかった。  それが透が真面目な付き合いをしなくなった一因でもある。  そんな昔の男が、仲良く恋人を同伴して店に入って来たのを目撃してしまっては、平静ではいられない。  今回が透の時のように遊びでないことはすぐに分かった。  今まで何人もの男と付き合っていた男は、決して相手の男に何かをしてやることはなかったのだ。  尽くすのはいつも相手の方で、男はソレが当たり前だった。  それが、その時見た男はドアを開けるところから椅子に座るまで、見たこともないエスコート振り。  大事な物を扱うように、そっと触れる仕草。  透の視界に入ってくる二人の姿は、見たくなくても見えてしまい、自分の時との違いをまざまざと見せつけられるようだった。  居たたまれず、透は適当に理由を付けて合コンの席を抜けたのだ。 「マスター、もう一杯……」  手にしたグラスをマスターに差し出す。 「だめ。飲み過ぎだよ。今日はもう止めておきなさい」  マスターは透の手からグラスを取り上げ、片付けてしまった。  手持ちぶさたになった透は、カウンターに伏せるように倒れ込んだ。 「透くん、大丈夫かい?」
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