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「どうしたんだい?」
千鶴さんが俺のあまりの間の抜けぐあいに、心配になったのか俺に声をかけてきた。
俺は素直に思ったことを伝えた。
「初めて知ったぞ」
「え…?」
俺以外の4人ーーーもちろん結綺乃も含むーーーが唖然としながら額に汗を流し口をぽかんと開けた。
「凉…本気で言ってるのかい?」
「ああ。普段からテレビとかあんまり観ないだろ俺」
観るとしたら料理番組くらいだ。
「こんな都会にも私を知らない人がいるなんて…私もまだまだね」
俺の態度がそんなに気に入らないのか、結綺乃は頭を左右に振って両手を挙げやれやれといった感じだ。
「そんなに有名なのか?」
「有名ですよ!」
と詩織が身を乗り出す。
「私、センナさんに会えて感激です! 握手してもらっていいですか?」
「え…ええ」
詩織の勢いに飲まれ、結綺乃は差し出された右手に自分の右手を合わせ、握りしめた。
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