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「なんのつもりだ?」
「怪しいのよ逆に。逃げなさいと言って逃がす振りをしてさらに拘束するのが目的なんでしょう?」
「お兄ちゃんはそんなことしませんっ」
「ごめんね詩織。私はまだあなたたちのことは信用できないの」
「別に自分からチャンスを潰すんならそれでいいけどな」
俺は嘆息すると再び歩きだした。
こいつも逃げられ尚且つ俺も面倒ごとから解放されるにはこの案が一番だと思ったんだけどな。
「ここが蒼暘町の商店街です。ここに来れば大抵のものは揃います」
「へぇ…随分広いのね」
現在俺たちは蒼陽町商店街の中央バルコニーにいる。
元々流通が盛んな地域であった厚木垣、その周辺もかなり栄えていたらしく当然ここ蒼陽町にも影響が及んでいる。
「結綺乃さんはどこか行きたいところありますか?」
「そうね…春物が見たいわね」
「だったらこっちです」
春物とは服のことで詩織はそれを聞くと手を引いて女性ものの服屋に消えていった。
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