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「凉。君にはあの子の許婚になってほしい」
「は?」
間の抜けた俺の声と共に沈黙が訪れる。
が、それはすぐに千鶴さん以外の俺を含んだ三人の叫び声によってかき消された。
「ここは…」
俺たちが千鶴さんの説明を受けてしばらく。
彼女は目を覚ました。
「どこってことはないわね。そこの誘拐犯のアジトでしょ」
「やぁ、目覚めはどうだい?」
いやアジトじゃないから。
千鶴さんも千鶴さんでなんとも挑発的な喋り方をする。
「生涯で一番最悪の目覚めだわ。いったい何のつもりよ」
「だからいっただろう。許婚だって」
やはり許婚ネタは使われているようだ。
「初めて聞いたわよそんな話。いいから私をとっとと家に帰して」
「往生際が悪いねぇ。これは君と彼の親が小さい頃から話し合って決めたことなんだ」
そんな詳細設定、俺も初耳だぞ。
「だからそんなこと誰が証明するのよっ!」
「君のおばあさんさ」
そういって千鶴さんはポケットから取り出したスイッチを押す。
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