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晶と倉本が帰った後、2人きりになった川端と生方は、英歌詞の音楽が小音量で流れる店内で向かい合ったまま黙っていた。
「晶も大分慣れてきた」
「ん?僕に?」
「違う。この店に。
今日のは反省しろよ。晶に迷惑かけたんだから」
「分かってマス。だから指輪も渡したんだし………」
コーヒーを飲みながら言った川端に溜め息で返した生方。
生方は川端が言った今の言葉の本当の理由を知っていた。
そのため、再び沈黙が続いた。
「お前………」
その沈黙を破ったのは生方。真剣な面持ちで川端に話し掛けていた。
生方の雰囲気から言いたい事が分かるので茶化さず「何?」と答える。
「あの指輪、本当に……晶のために買ってきたのか?」
睨むように見つめ、冷たく言い放った生方。
川端はその目にも怯まず、真剣な表情から笑顔に変えてコーヒーを口に運んだ。
その笑顔は肯定の意味なのか、それとも否定の笑顔なのか………
ただ1つはっきりしている事は、川端が悲しそうに笑っていた事だけだった。
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