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カフェ『APRICOT』。晶の居ない店内は、休日だと言うのにいつになく静かだった。
今日も彼女の代わりにせっせと働く杏子(アンズ)の弟・梨子(リンゴ)。
彼は中間テストの勉強のためにバイトを休むと言って、晶にその代理を頼んでいた。
しかし、テスト勉強だけではなく、川端に会いたくないため余計な休みまで入れた事が兄の杏子にバレて、暫く土日は梨子が出る事になったのだ。
「しっかり洗えよ」
「分かってんよ!!
ったく……何で土日にバイトしなきゃなんねえんだか」
「それはお前がズル休みで晶を働かせたからだ」
「う゛……!!」
図星を突かれて言葉を詰まらせる。
それと同時に皿洗いの手が止まると、杏子に「手」と指摘された。
逆ギレだと分かりながらも、言われた事に腹を立てて舌打ちしてから皿洗いを再開した。
相変わらず客は常連客がまばらに来るだけで、新しい客の顔は見ない。
本当にこんなんでやって行けてるのか心配になる梨子だったが、金の工面は兄に任せてあるため自分は干渉しなかった。
冷たいわけではない。ただ、兄の威厳のためにも口は挟まないのだ。
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