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「あの………離して下さい」
「あ、じゃあ逃げないでね。怪しくないから」
掴んでいた手を緩めた川端だったが、完璧に離してはいないので逃げる事は出来なかった。
逃げる気がない晶は信用して貰えてない事に溜め息をついて諦めた。
「しょーちゃんっていつから働いてるの?」
「えっと……5月からです」
「そうなんだ。じゃあ丁度ボクが来ない時期に働き始めたんだね。ボクは川端。店長の親友で同じ学校卒業してるんだよ」
「そうなんですか。じゃあ川端さんも製菓関係の仕事に就いてるんですか?」
「いや。就いてないよ~。
作るのは好きだけど飽きちゃうんだよね。だから就職しなかった」
性格は温厚そう。話している間も終始笑顔だった川端に悪い印象は持たなかった晶。
しかし、一癖ありそうと言うかつかみ所が分からない人物と言うか、謎な雰囲気を醸し出しているように感じた。
暫くして、仕方なさそうに川端の向かい側の席に座り話しをしている晶を見付けた生方がテーブルに近付いてきた。
「こら。こんな所でナンパしてんな!!」
「あ、ウブ。いいじゃんか~。可愛いんだもん。話したいんだよ!!」
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