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いつもと違う雰囲気の川端に怯み、苛立っていた事も忘れた梨子はバツが悪そうにして俯いた。
「ナシコちゃんも経営側なら分かるでしょ?今、彼女らを罵倒すると不利になるんだよ」
「それに、お前の友達なんだろ?来てくれただけ感謝してる」
「ウブ、それは言い過ぎ。
来て何も頼まないのは客じゃないよ~」
「俺は梨子に感謝してるんだよ。だって、そこまで怒るのはこの店が好きだからだろ……?」
杏子が笑いかけると、梨子は図星を突かれたようで少し顔を赤くして俯いた。
この店と兄貴を大切にしてると川端にバレたら、またからかわれると言う思いもあり、杏子の問い掛けに答える事は出来なかった。
すると、川端が溜め息をつきながら笑って
「そりゃ、この店嫌う人間は居ないでしょ。少なくとも、常連客は好きだから来てるわけだし。
彼女らも嫌いで言ってるわけじゃないだろうし。
だから騒ぎ立てる意味なんてないんだよ」
と梨子の方を見て言った。
コイツ、何も考えないで兄貴のコーヒー飲んでるのかと思ったら……案外店の事分かってたんだな……。
川端の意外な一言で梨子は呆気に取られた。
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