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キッチンに入る前、チラッと川端の方を見てみた。
アップルパイが用意されると分かったからなのか、川端は凄く嬉しそうに笑ってコーヒーを飲んでいた。
ああ……やっぱり客と経営側、お互いが好きじゃなきゃこんな雰囲気にならないんだ。
梨子は川端の振る舞いに対して良い印象を受けてはいなかった。しかし、さっきの言葉と今の表情で川端が杏子の考えをどれ程理解しているかが分かった。
それが嬉しかったのか、梨子は珍しく川端を褒めた。
「川端って案外すげぇ奴なんだな」
「ん?今更気付いたのか?」
「兄貴の事困らせてるだけじゃなくて、ちゃんと店の事も分かってたんだな」
「そりゃそうだ。だってこの店、竜史が半分デザインしてるからな」
「………は!?」
珍しく褒めていると杏子の口からありえない新事実が発覚した。
この店のデザインを半分担当した!?だからあの席がお気に入りなのか!?
ちょっと川端の事を理解したと思ったら、またすぐ分からなくなる。
実体があるようでないクラゲ……若しくはお化けみたいな男だ。
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