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「あの、か……川端さんの事を教えて下さい!!」
「……竜史の事?」
やっと言えた本題。それは杏子にとって予期せぬ事だった。
まさか晶まで川端の毒にやられるとは……
娘を取られた父親みたいな感じがした杏子だったが、先程晶に「答えられる範囲ならいいぞ」と約束してしまった手前、知っている川端の情報を話さなければならない。
杏子は溜め息をついて、言い切って疲れた顔の晶に向かって「ま、座って話そう」といつも川端が座る定位置に着いた。
木漏れ日が差し込む穏やかな空間。この場所でいつも川端はコーヒーを飲んでいるのかと思うと、あれだけ長居する理由が分かる。
2人掛けのテーブルなので、杏子の向かい側に座り杏子の手を見つめる晶。目を合わせるのはどうにも恥ずかしくて出来ない。
「竜史の何が知りたい?」
「えっと……」
そんな気まずさを察知したのか、杏子はすぐに本題へと戻してくれた。
しかし、何を知りたくて聞いているわけではない晶に質問しても、とっさに聞きたい事が思い浮かぶハズもなく……
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