第六章

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こんな時…度胸のある男だったら…。 などと壁にブツブツ呟いていた時だった。 「…シノ……さん」 俺はドキッとして、そのまま寝たフリをしようと目を瞑った。 俺ってどけまでもチキンだなぁ。 自分に呆れていた。「シノ…さん……どこにも…行かないで…」 俺はそれを聞いて思わずさなえの方を向いた。 さなえは泣いていた…。 「…」 言葉が出なかった。 「ずっと…ずっと一緒に…」 俺はどうしたらいいのか分からなかった。 女子に免疫があるとかそういう問題では無かった。 本当なら 「大丈夫!どこにも行かないさ!」 そんな格好いいセリフを言ってあげたい。 言ってあげたい気持ちは溢れるほどにある。 だけど…。 いつ帰れるかなんて分からない。 ましてやココは俺の知らない街で…いつまでもココにいる訳にもいかない。 いつまでも一緒にいられる保証なんてどこにもないのだ。 そう思ったとき、急に悲しくなってしまった。 そしてまた壁の方に寝返りをし、目を瞑った。 はやく朝になってくれ。 そんな事を思いながら夜はふけていった。
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