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第三章
「今お茶いれますから、適当に座ってて下さい」
そうさなえが言って、お茶を入れに行く。
俺はリビングの真ん中に四角い小さなテーブルの近くに座った。
ぱっと部屋を見渡してみる。
さなえの部屋は綺麗だった。
リビングに、お風呂とトイレ…それに押し入れがあるシンプルな作りになっていた。
テレビの横には本棚があり、テレビと正反対には青色のベッドがある。テレビとベッドの間には、ベランダだろうか。窓があった。
「烏龍茶しかありませんでしたが、どうぞ」
さなえが戻ってきて、俺に烏龍茶を差し出した。
「ぁ、お構いなく」
俺はすかさず返事を返し、烏龍茶を一口。
少し落ち着いた所でさなえが
「女の子の部屋は初めてですか?」
っと訪ねてきた。
「ぇ、えぇ…まぁ」さなえがちょっと意外そうな顔をして
「へぇ~…シノさん彼女さんとかいそうな感じなのになぁ♪」
俺は苦笑いをして、もう一度烏龍茶を一口。
「ん~やっぱ少し落ち着かないなぁ」
俺が笑いながら言うと、さなえが
「あら、私だって男の人を家に招待したの初めてで、少しドキドキしてるんですよ」
さなえが笑いながら言った。
「お互い似たもの同士…ですかね?」
「ん~…ちと言葉が違う気もするけどね」
二人で笑う。
「そいやぁさなえさん、家族は?」
俺がふとさなえに訪ねると、さなえはちょっと悲しそうな顔をして、コップに入った烏龍茶を見つめながら言った。
「私ね…家族の事…分からないんだ」
「ぇ?」
「私、気づいたらココに暮らしてて、家族とかもいなくて。気づいたら、ココにいるのが当たり前のようになってたんだ。不思議な話でしょ」
俺の中で何故かその時、リエと別れる前の言葉がよぎった。(あなたなら…もしかしたら…)
何か関係があるのか…それとも…ただの思い過ごしか。
「シノさんは?家族は?」
今度はさなえが俺に質問してきた。
「ぁ、えーと、俺は父親母親両方いるかな。兄弟はいない」「へぇ~」
「まぁ。父親は仕事でしょっちゅう家にいないから、実際母親と二人暮らしみたいなものだけどね」
俺が喋り終えると、さなえが
「いいなぁ…家族って暖かそう…」
「まぁ…ね。さて、俺はそろそろ置賜するかな」
俺はコップに入ってる烏龍茶を飲み干し立ち上がると
「ぇ!?どこに行くんですか?」
「ん、家に帰るんだけど?」
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