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薄暗い場所を1人の青年が歩いていた……少し長めの黒髪に、やや幼さが残る顔立ちをしており、シンプルな礼服を纏った二十歳前後と見える。
奇妙なのは、片腕に銀色の鎖を巻き付けており、青年が歩く度に金属特有の音が鳴る。
青年の片手には、淡い光を放つランプを持ち、それが唯一の明かりでもある……空には、赤い月が不気味に下を見下ろしている。
時折、僅かな明かりが灯る場所には、骨で作られた不気味なオブジェが置かれており、不気味さをより一層、深めている中を青年は、顔色を変えずに黙って歩いている中、青年の背後に淡い青色の人魂が現れた。
「……」
青年は、黙って振り返ると人魂に近付くと、人魂はユラリと揺らめいた。
青年は、そっと手を伸ばして人魂に触れた…。
「〝人の形〟すらなくしてしまったか…初めてのケースだな」
静かだが、よく通る声で青年が人魂に言う……その時の青年の瞳は、哀れみと悲しみ……そして、慈しみといった感情が混ざっている。
「俺と来るか?」
人魂は、再びユラリと揺れる……まるで青年の問いに答えるかの様に。
それを見た青年は、再び歩き出す……人魂は、ゆっくりと後を追っていき、二人の姿はやがて……闇に消えた。
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