チヨ

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トーマはあたしの横に座り込んで、ふうって息を吐いた。 「僕こんな所に来たくなかったのに、マッシュが度胸試しだとか言ってさあ……」 「ここ、嫌いなの?」 「嫌いっていうか、 魔王が住んでるから怖いじゃん」 「マオー、嫌い? チヨ、マオーと住んでるよ」 トーマの顔が、くしゃって潰れた。 昨日失敗しちゃった、折り紙みたい。 「え、魔王、と? じゃあきみ、魔王がパパなの?」 「パパって……オトーサンのこと?」 こくりとトーマが頷いた。 オトーサン……どうだろう。 あたしはオトーサンがどんなのか、知らない。 今日マオーに聞いてみようかな。 「トーマのオトーサンは、どんな人?」 「え、僕の? そうだなあ……とっても格好いいよ。 恐いけど、とっても優しいし。寝る前に絵本を読んでくれたりするよ!」 「……トーマは、オトーサン、大好きなんだね」 「うん!」 にっこり顔のトーマ。 あたしも笑った時、こんな風にキラキラして見えるのかなあ。 草むらが、がさり。 「トーマっ! てめぇ何いなくなってるんだよっ」 「あ、マッシュ」 慌てて立ち上がったトーマの前に、大きな男の子。 顔がとってもごつごつしてて鼻がキレイにぺしゃんこだ。 すごい、今日は2人も人間を見ちゃった。
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