チヨ

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「――げ。なにこの変な女」 マッシュの口元が、苦々しく引きつった。 あたしが、 「村に行ってみたい」 って言った時のマオーの顔を思い出す。 こんな顔してたな、マオーも。 どんな気持ちの時、こんな顔するんだろう。 「おい、トーマ!」 「えっと、チヨっていうんだって。塔に住んでるらしいよ」 「塔ッ!?」 一歩二歩三歩。マッシュが後退りしていった。 (……嫌だな) マッシュが、私を見る目。 なんだか、すごく嫌であたしは俯いた。 「こいつ魔族かよ! 気持ち悪りぃッ」 「……あたし、人間だよ。 マオーが、そう言ってたもん」 「そんな変な髪の色した人間がいるかよ。 目もなんか気味悪い色してるし……」 屈んで、足元にあった太い木の棒を拾ってマッシュは、にやりとした。 「ちょっ、止めなよマッシュ――」 「魔族はこのオレが退治してやるっ!」 木の棒が ヒュン ッて風を切った。 痛い。右手首がじんじんする。 さっき摘んだ草が、ひらひら。地面に落ちてった。 その草を踏んで、マッシュがさらに腕を振り上げる。 (――恐い) マッシュの目が、すごく、すっごく恐かった。
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