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肩に走る鈍痛。
棒に殴られた痛み?
ううん。トーマがあたしを突き飛ばした衝撃だった。
よろけて尻餅をついたあたしは、顔をあげて驚いた。
「なにすんだよ、トーマ」
「だって……棒なんて危ないよ……」
2人はまだ気付いてない。
金の長い髪。瞳は緑の宝石。真っ黒なローブが風に揺れた。
(マオー……)
マオーの手が、ゆっくりマッシュにのびる。
「だいたいマッシュは、さ……あ」
先に気付いたのはトーマ。
ハッと目を見開いて、息をのんだ。
震えた唇からは、掠れた息。
マオーが薄ら笑いを浮かべた。
マオーが笑うなんて、すごく珍しい。
人間に会えて嬉しいのかな。
「――ヒッ」
マオーの手が、マッシュの肩に触れた。
長い長い爪と指を、まるで確かめるように一歩ずつ肩に置いていく。
(なんで、2人とも震えてるんだろう)
マオーが恐いのかな?
大丈夫なのに。
あたしは、まだマオーの怒ったとこ見たことないもん。
……そう思っていたんだけれど。
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