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私は寂しかった。
とうとう同族の最後の1匹、スライムまでもが亡くなってしまった。
それも、小さな村の悪ガキ共によって。
「ははっ……」
いくらスライムがたいして強くはないといっても、
子供によって魔族が殺されるなんて……
夢にも思わなかったのに。
あぁ、それ程までに我々は弱体化してしまったのだ。
100年程前の、あの日。
私が勇者に倒されてしまった、あの日から――
「や、やめてくれ……もう人間を襲ったりしない!」
「何を今更っ」
私の願いは聞き届けられることはない。
それでも、祈ってしまう。
勇者はまた1匹、横に居た魔族を切り捨てた。
「やめてくれ! 私だ、私が悪かったのだ。彼らに非はない……
どうか、仲間たちの命だけは……」
「オレの家族も! 村も! お前たちに殺されたんだ!」
恨み、憎しみ、悲しみ。
全ての負の感情が、勇者の目から伝わってきた。
私には、何もできない。
ただ最後まで、震えながら、同朋が死んでゆくのを見ているだけしかできなかった。
「お前は、殺さない……ずっと苦しみながら、ここで独り生きろ」
そう言って勇者は、立ち去って行った。
もちろん我らの力の源、“魔石”を粉々に砕いてから。
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