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あたし、チヨ。
マオーと一緒に、この塔で住んでる。
あたしは人間で、マオーは魔族。とっても仲が悪いんだって。
でも、あたしとマオーは喧嘩なんてしないのに。
それでも仲良しには、なれないのかな?
あっちにある、たくさんのお家は“人間の村”
人間がたくさんいるみたい。
でもあたしは、マオー以外の人を見たことない。
あ、マオーは人じゃないんだっけ。
この草は食べられる。
こっちの果物も。
あのキノコはダメ。
……あたしの知ってることは、とっても少ない。
マオーは何でも知ってるけど、聞かなきゃ教えてくれない。
だからあたしはいっぱい喋るんだ。
マオーが話してくれると、とっても嬉しいから。
……この葉っぱは食べられるかなあ。
「ねぇ、きみ」
見たこと無い葉っぱを、夢中で掘り返してたら“声”がした。
マオーの声じゃない。
びっくりして振り返れば、見たことない人。
「こんな所で何してるの?
塔の近くは危ないってママが言ってたよ」
「……ママ?」
「うん、きみのママは何してるの?」
「チヨの、ママ……?」
「あ、きみチヨっていうの? 僕トーマっていうんだ」
トーマ。あたし、知ってる。
トーマは男の子だ。
この前読んだ絵本に出てきた、畑で駆け回っていた男の子にそっくりだもん。
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