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ここは竹林。大きく開けた『いつもの場所』
「今日も来てあげたわよ、妹紅」
私の耳朶を震わせる、美しく憎らしい声
「よぉ、輝夜。今日も一段と性根が腐ってそうだな」
一声あいつに向ける度に、心の臓腑が猛り狂う
「ふふ……貴方も今日は輝いて見えてよ?まるで血に飢えたケダモノの瞳だわ」
口端が歪む。頬が勝手に笑み作る
「さぁ、そろそろヤるとしようぜ」
焔をこの掌に。遮る愚弄が私は焦がす
「えぇ。続く永遠は須臾と同じ。この瞬間こそが唯一動く私達の待ち望む『時間』なのだから!」
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・・・・・・
・・・
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「はぁ……はぁ……」
ずしゃ、と穿った腕を輝夜の胸から引き抜く
支えを失った体は傾ぎ、倒れ伏せる
「これで……私の負け分は返したぜ」
「あらら……負けちゃった。やっぱり自宅警備だけじゃ体力が落ちるのかしら」
輝夜はズタボロになりながらも笑う
「かもな。たまには動けよ、コレ(殺し合い)以外でもさ」
「やぁよ、面倒臭い。………そうだ。ならいっそ貴方が堕ちておいでなさい。たっぷり染めてあげるから」
即座に浮かぶ反論。でもまたすぐに打ち消す
だって、きっとこれはまた輝夜が思い付いた『児戯』なのだから
いくら最高に美味しい料理だって、同じものが続けば飽きてしまう
だから私は輝夜を愛する
愛して、殺して、憎んで、殺す
きっと輝夜もそう
当の昔に怒りは薄れ、時の流れに摩耗した
お互いに続けるは惰性
でもこの惰性を止めてしまえば、私達の心もきっと動きを止める
だから輝夜は私を殺す
殺して、愛して、殺して、憎む
憎しみ合うことに飽けば愛し合い、愛し合うことに飽けばまた憎しみ合う
「さぁ、行きましょう妹紅(愛しているわ。殺してあげたくなるくらいに、愛しているの)」
「そう急ぐなよ。時間ならそれこそ永遠にあるんだからさ(嗚呼。なんて憎らしく愛しいんだろう)」
立ち上がった輝夜が先を行く
しかし、ふと振り返り私を見る
「ねぇ妹紅」
そう、これは私達の間では不可欠な不文律
「あぁ、輝夜」
二律背反の想いを、二人同時にさえずるのだ
『コロシテヤル』
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