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自転車が重い。
迅音(はやと)はペダルを思いきり踏み込んで、通学路をひた走っている。
「また遅刻ってさぁ」
今朝のバスケ部の朝連もすっぽかし。
昨夜は、泣き続ける自殺者の霊をなだめ浄化するのに徹夜してしまったのだ。
一昨日もその前も、隠国(こもりく)法に従わず違法に駐留し続ける霊達を、一人一人説得して回り浄化していた。
なので寝不足により、体力的にも限界にきている。
だからといって止めるわけにはいかない。
松川迅音には、呪禁師としての誇りがあるのだ。
目の下のクマが祖父譲りの銀髪と奇妙なコラボを果たし、とんでもない迫力を醸し出している。
そんな己の状態に気づけるはずも無く、走るクラスメイトへ笑いかけて退かれていた。
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