ひとりぼっち

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「では、よろしくお願いします」 「休みには会いに来てあげて下さい」 「わかりました」 逃げるように車に乗り込む親戚のおじさん。 親戚と言っても二人しかいない。 パパの弟とママのお姉さん。 「行きますよ」 「……………」 四十九日が終わり、 蝉が早々と鳴き出した 7月の蒸し暑い日に、 私は小さな荷物ひとつと、ママに買ってもらったヌイグルミを持って、 施設に引き取られた。 窓から私を興味津々な顔で見つめる子供達。 私も子供だけど…… 「部屋はここよ、荷物を置いたら下に来なさい」 「…………………」 「返事!」 「…………はい」 さっきの態度とは違う 大人を見つめながら、 部屋に入る。 「あんたはそっち!」 何故か床にはテープが 貼ってある。 「こっちが私の場所だから勝手に入らないでね」 は? 明らかに広さが違うけど…… でも、部屋なんてどうでもいい。 私はベットの上に荷物を置いて、テープで仕切られたスペースに入らないように部屋を出た。 「あほくさ……」 下に行くと、みんな集まっていた。 「今日からここでみんなと生活する……ほら、自己紹介!」 「有森 椎名です」 「みんな仲良くするように」 (は~い) 適当な返事…… その後、いろんなルールや部屋の使い方を教わり、夕食の時間になった。 私はご飯をよそう係りだと言われ、お茶碗にご飯をよそった。 「もっと!」 「……………」 言われた通りによそう。 そして、自分の分をお茶碗によそおうとしたら、 ご飯は無くなっていた。 「あの……ご飯が」 「自分のミスだろ?決められた量を守らなかったお前が悪い」 聞いてないし…… 仕方なく、ご飯のない 夕食を食べた。 美味しくはなかった。 切り干し大根なんて、 初めて食べたし、お味噌汁にもやしを入れるなんて驚いた。 「残すな!」 先生に言われ、無理矢理口に押し込む。 てか、先生? おかしいでしょ…… 私にはロッテンマイヤーさんにしか見えない。 新入りの私は入浴も最後だった。 「汚い……」 シャワーなんてない。 濁った少ないお風呂のお湯をただ、見つめていた。 お風呂で泣くなんて嫌! 仕方なく水で体を洗った。
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