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ほとんど話をしない私は、先生にも嫌われていたらしい。
何かあると必ず私が怒られた。
ご飯抜きなんてしょっちゅう……
これが現実なんだ。
私には守ってくれる人なんていない。
だから、自分の事は自分で守るんだと知った。
ちまちまとしたいじめが続き、私は中学生になっていた。
中学に友達なんかいない。
施設に居るとみんな知っていたから。
学校でもいじめられていたけど、私は絶対俯かなかった。
確かに私は不幸だけど、
それを憐れみにはしたくなかった。
臭くもないのにばい菌
扱いされるのにも慣れた。
確かに両親を恨んだ事もあったけど、恨んでも
もとの生活には戻れない。
親戚は一度も現れなかった。
大人は信用出来ないと
思うようになった。
いつもの帰り道、
一人で歩きながら道路に
キラッと光るものを見つけた。
「ん?」
別に走る訳でもなく、
ゆっくり近付く。
「………ブローチ?」
しゃがみ込んでキラキラ光るブローチを拾い、
太陽に透かしてみる。
「綺麗……」
しばらく回りを見ながら、落とし主を捜した。
「どうしよう」
綺麗なガラスの靴の
ブローチをにぎりしめながら考える。
警察には行きたくない…
施設に居ると言うだけで、盗みの疑いをかけられるのはしょっちゅうだったから。
だけど、持って帰るのは泥棒かも知れない。
「どうしよう……」
困り果てていた時、
後ろから声をかけられた。
「この辺りにブローチが落ちていませんでしたか?」
「……………これ?」
にぎりしめていたガラスの靴を差し出す。
「それです!ありがとう」
「いえ」
取りあえずよかったかな……
ブローチを渡し、歩き出そうとしたら、呼び止められた。
「失礼ですが、持って帰ろうとは思わなかった?」
本当に失礼だ……
「泥棒にはなりたくないから」
「そう……貴女、お名前は?」
変なおばあさん……
「有森 椎名」
「椎名ちゃんね…本当にありがとう。もう遅いからお家まで送るわ」
「いえ…結構です」
「駄目よ、もし何かあったら……さぁ車に乗って」
何もないと思うけど、
もし、何かあったらこのおばあさんの心臓が止まっても困る。
仕方なく、送ってもらう事にした。
知らない人の車に乗るほうがよっぽど危険だと、
後から気が付いた。
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