12676人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前達、遠山に騙されるな」
教室の皆に聞こえるように声を張り上げる。
遠山はそんな俺に対して前回の二の舞にならないぜと口を閉ざす。甘いな遠山、すでに仕込みは万全だ。
「そこの男前のお兄さん」
そう言うと全員こっちを向いてそれぞれ返事をしてきた。
ダメだ……なんて自意識過剰なんだ。明らかなお世辞をまともに取り過ぎだ。俺なら自分カッコイイみたいに返事する勇気はないぞ。
「ええと……そこの大柄な短髪のお兄さん」
今度は通じたようで、相撲でもやってそうな体型の男子生徒が前に出てきた。
「質問なんだが、遠山は眠り姫ファンクラブに入会したのか?」
勘――なんとなくこいつはファンクラブの中の地位が高いと思った。色々な修羅場を体験したからこそ見える感覚。まあ、間違ったら他聞けばいいし。
「ああ、我らが同志よ!」
豪快に笑う。うん、とりあえず必要な事は知ってそうだ。
「それっていつの話なんだ?」
「確か一週間前か」
貰った。
「眠り姫条約第二条。女神は二人はいらない……だったっけ?来栖以外の者にうつつをぬかしてはいけないだったな」
遠山を見ながらそう言ってみると、視線を逸らしダラダラと汗を流し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!