狂いし道筋

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神龍市内某ハンバーガーショップ前。 全国チェーンの二十四時間営業の為、夜の十時前のこの時間でも店内は明かりが消えず、外の暗闇から覗くと少し眩しくさえ思える。 「たく、やってらんねぇな」 高校の制服を着崩して怠そうに帰宅する、茶髪を短く刈り上げた若者がいた。彼は某ハンバーガー屋のバイト終わりで、不真面目な態度を理由に散々店長に絞られ、残業させられ不機嫌そうな表情を顔に張り付けている。 ここしばらく家には帰っておらず、友人の家を転々として過ごしている。理由という大きな理由はないが、両親の煩わしさに自由を求めて飛び出した。 こんな生活を繰り返しているせいか、両親にも周りにも見離され不良のレッテルを貼られている。自由な不自由だと、どこかで理解しながらも止められない。 ジャラジャラと着けたストラップの感触を確かめながら、携帯を取り出し画面を見る。 「圏外?こんな所でか」 舌打ちをしながら歩き出す。もう夜も更けて人の通りもない。車の音、虫の鳴き声、人の気配さえもしない。 苛々に心乱されず、平常心なら気付いただろう。辺り一帯が静か過ぎるという違和感に―― その男はふと空を見上げた。 「へぇ……今日は満月か。綺麗じゃねぇか」
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