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「あー……凄いな」
下では男達による暑苦しい鍵争奪戦が行われており、委員長含めクラスメイト全員が呆気にとられていた。
「ねぇ、誠。何の鍵投げたの?」
鍵争奪戦を遠目に眺めながら、ため息混じりに口を開く。
「あれは俺の家の鍵だけど……合い鍵作らないとなぁ」
メールで未知に俺が鍵を渡すから、他の奴にばれないように受け取って「くるす」と書いてまた渡してくれと指示を出した。
鍵の受け渡しは二度あった接触時。未知が俺の背後を通り過ぎた時と、握手した時。
来栖の鍵は渡し方からして、何か意味があるように思えた。だから家の鍵に犠牲になって貰ったんだけど……ああ、余計な出費が。
「僕のバカ!あれがあれば……あれさえあれば皆から一歩リードじゃないかっ!うりゃあああ!!」
ええぇぇええ!?
未知が腕まくりをし掛け声と共に窓から飛び降り、鍵に向かって素早く駆けて行った。
「い、一体何が……?」
「全く騒がしい連中ね。クラスの平和の為に、あくまでも委員長として私がなんとか止めてくるわ。別に鍵とか本当に本当に本当にどうでもいいんだけどね。だりゃあああ!!」
委員長!?
同じく掛け声と共に窓から飛び降りてスタンと片膝ついて着地。
皆簡単に飛び降りるけど、一応二階なんだけどな。
ガタンと椅子が引かれる音が……
「琴葉……よく分からないがお前は止めとけ。お前の運動能力だと、足を捻挫する確率がめちゃめちゃ高いから」
「ふぇぇん……」
何故か同じく続こうとしていた琴葉が涙目になった。いや、何がしたいんだろうな。
戦いが過熱する中、授業開始のチャイムが鳴り響く――
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