引かれ合う因縁

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「琴葉、マッチョ鈴木さんなんだが、恋愛講座やら悩み相談やらもやっているみたいだな」 朝の通学路で制服姿に身を包み、いつもと同じく隣を歩く整った長い黒髪の清楚な雰囲気をした、我が幼なじみに話題を提供してみた。 昨日遥さんが参考にしたデート雑誌を貸して貰った。というか買い物から帰ってから食事の後で、今日を振り返りながら一緒に見るというよく分からない状況になった……まあ、意外と盛り上がって楽しかったけど。それにマッチョ鈴木のコーナーを発見した訳だ。 それにしても……遥さん、なんか様子がおかしかったような気もしたんだよな。ふとした拍子に沈みがちな表情を見せたり。気の回し過ぎだといいけど。 おっと……俺まで沈みがちになってどうするんだよ。苦笑しながら気を取り直して琴葉を見ると、驚いている様子が見てとれた。 「え、うん。誠ちゃん博識だよぉ」 素直に感心されるとこの後続けにくい。だが俺は心を鬼にする。この可愛い幼なじみが強くなる試練の為に! 「神龍市にお住まいの女子高生。ペンネーム、通りすがりの巫女さん」 そこまで言ってから琴葉を覗き見ると、笑顔を貼付けたまま凍り付いた。 「どうかしたか?」 「ナンデモナインダヨ」 明らかに棒読みな台詞。分かりやすい、実に分かりやすい。 「毎回応援ありがとう!確か本物の巫女さんなのよね。私も巫女服似合うかしら?まずは相談お聞きしましょう」 チラリと見ると拳をグーにして、ブルプル震えていた。
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