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とりあえず後でフォローしておこうか。
来栖は俺の方を向いたまま、手に持つ紫と白の入り交じる風呂敷をそこはかとなく満足そうに見せ付けてきた。
「…………」
「…………」
無言。見つめ合えば伝わる素敵なテレパシー。
いやいやいや、超能力の人じゃないから、なんか言ってくれないと分からないから!
……ん、待てよ。黒い漆塗りの色が少しだけ透けて見える。
「重箱?」
弁当か?
「…来栖と誠の…お昼期待しているといい…」
少しだけ自信ありげな笑みを見せ、来栖はそれ以上何も言わないまま走り去って行った。
来栖が笑った?
めったに見れないその笑顔に、少しだけ見とれてしまったのは内緒にしておきたい。
それにしても遥さんとの弁当問題は解決してなかったのか?遥さんもしっかりと弁当を持たせてくれたしなぁ。一体来栖が遥さんに渡した紙はなんだったんだろう。
昼休み食べ過ぎで死ぬかも知れない……早弁でもしておくべきだろうか。
「琴葉、次の投稿なんだが、ペンネーム通りすがりの巫女さん再び。以前鈴木さんに教わった通りにバストアップ体操を毎日していたら、おじいちゃんに見付かって怪しげな踊りじゃなと『きゃあああああああああ!!』
琴葉のポカポカがまたもや炸裂した。
「あー、琴葉のおかげで癒された。うん、ありがとう」
「嬉しくないよぉ!」
毎日の日課になっているやり取りをしながら、学校へと向かう。
――この時はいつものくだらない一日になるんだと思い込んでいた。
今日は木曜。土曜の桐沢との対決までは作戦会議や準備くらいで、やる事などいつもの延長。何かあってもたかが知れている……はずだった。
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