引かれ合う因縁

5/71
前へ
/182ページ
次へ
◇ 「ねぇ、雪鬼君」 HRの終わり。一限目の授業の準備をしていると、眼鏡に三つ編みがトレードマークの女性が俺の席まできた。 クラスメイト達はそれぞれお喋りしたり、外に出たりと騒がしく誰もこちらに注目していない。人の目があった方が、彼女の暴力に対しての抑止力になるのに……多少はだが。 「何かな委員長」 そういうと何故か眉が吊り上がった。ぶっちゃけ委員長の睨みは凶器になりえそうなので、あまり機嫌を損ねたくないんだが。 「雪鬼君、私の名前言ってみてくれるかしら」 「委員長……?」 目がギラリンと輝きを増す。綺麗な宝石のような輝きではなく、鈍い光りを放つ鉈のような輝き。 危険度数はすでに臨界点近い。 「な!ま!え!をフルネームで言ってみてくれるかしら?」 力いっぱい肩を掴まれた。ギリギリと力が込められていて笑えない。もはや猶予はないようだ。だが、一年の時から委員長が定着し過ぎて、フルネームは自信がないんですが。万が一間違えたらしゃれにならない。 その時絶妙なタイミングで机に置いた携帯が振動した。それも間を開けて合計三通のメール。 「見てもいいでしょうか」 つい敬語になってしまう。 「……仕方ないわね」 委員長のお許しが出たので、携帯を見てみた。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12676人が本棚に入れています
本棚に追加