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◇
「ねぇ、雪鬼君」
HRの終わり。一限目の授業の準備をしていると、眼鏡に三つ編みがトレードマークの女性が俺の席まできた。
クラスメイト達はそれぞれお喋りしたり、外に出たりと騒がしく誰もこちらに注目していない。人の目があった方が、彼女の暴力に対しての抑止力になるのに……多少はだが。
「何かな委員長」
そういうと何故か眉が吊り上がった。ぶっちゃけ委員長の睨みは凶器になりえそうなので、あまり機嫌を損ねたくないんだが。
「雪鬼君、私の名前言ってみてくれるかしら」
「委員長……?」
目がギラリンと輝きを増す。綺麗な宝石のような輝きではなく、鈍い光りを放つ鉈のような輝き。
危険度数はすでに臨界点近い。
「な!ま!え!をフルネームで言ってみてくれるかしら?」
力いっぱい肩を掴まれた。ギリギリと力が込められていて笑えない。もはや猶予はないようだ。だが、一年の時から委員長が定着し過ぎて、フルネームは自信がないんですが。万が一間違えたらしゃれにならない。
その時絶妙なタイミングで机に置いた携帯が振動した。それも間を開けて合計三通のメール。
「見てもいいでしょうか」
つい敬語になってしまう。
「……仕方ないわね」
委員長のお許しが出たので、携帯を見てみた。
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