リムーバー

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「おはようございます、殿下」 「うるさいのう。レシアでよいと言っておるじゃろ」 目を覚まし、誰かの声に気付いたレシアは、少し遅れて自分の置かれている状況に、違和感を感じ取る。 自分が横たわっているそこは、王族が使うベッドなどではなく、冷たい石の上。 聞こえた声もまた、使用人のものではなかった。 手と足には枷をはめられ、広がる光景は死臭と血の臭いに満ち、地下牢か拷問部屋を思わせ、自由とは掛け離れたものがそこにあった。 「あなたは……誰?」 不思議と冷静でいられたレシアは、黒いローブを纏い、同じ色のフードを目深に被った人物に尋ねた。 露出が極端に少ないのと、部屋の暗さのせいで、年は疎か、男か女かすらわからない。 「私か?」 それが青年のものとわかる、低く洩れた声が地下牢に響き、戦慄がレシアを襲う。 自分が横たわる石の祭壇や、鉄の枷すら温く思えるほどの異質な圧力。 「フィリウス、フィリウス・バール・ダンタリオンだ」 それは聞いたことのない名ではあったが、名を介してその存在を確かに感じ取る事で、底無しの穴を覗き込んだかのような感覚がレシアを蝕む。 「こう言った方が馴染み深いかもしれませんね。 連続猟奇殺人鬼『リムーバー』と」
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